仙台高等裁判所 昭和27年(う)279号 判決
原審たる差戻後第一審において取調べられたすべての証拠を綜合し、被告人の生活環境、智能の程度、被告人の行為当時の社会事情など諸般の事情を考量するとき、本件焼酎は被告人が昭和二十五年九月二十七日頃八戸市大字湊町陸奥湊駅で氏名不詳の二十四才位の女から金二千五百円で譲受けて所持し且其頃之を其儘同市小中野町字場尻川村きく方に於て同人に金二千七百円で販売したものであること、而して被告人に於ては其焼酎が正規の免許を受けた酒類販売店で販売されて居る焼酎でないことを認識して居たことは之を窺知するに難くないが、斯様な認識あることからして直に被告人に、「此焼酎につき有毒物の有無等に関し検査を受ける等確実な方法により其成分を明かにする注意義務あり」となすことを得ない。けだし、単に焼酎が正規の業者以外の者の販売にかかるものであることの認識あるの故を以て其焼酎につき有毒物混入の有無を検査する義務を生ずるとなす所論は、社会一般人に要求さるべき通常の注意義務の程度を著しく高めるものであつてにわかに首肯し難いところである。